内戦激化イラク情勢：3つの勢力に分裂か

イスラム過激派によるバグダッドへの侵攻

・イラクのイスラム過激派組織『イラク・レバントのイスラム国（ＩＳＩＬ）』は、イラク中部の都市に侵攻、バグダッド制圧へ向ける。
・マリキ政権政府軍は、攻撃されたサマラ、モスル郊外地区、バクバ近郊などを奪還、ISILからのさらなる奪還を図る。
・シリアとの国境検問所や北部の油田の都市キルクークなどを、クルド人治安部隊ペシュメルガが制圧。
・政府軍は南部の油田地域の警備強化を図る。
・対立図はISILなどスンニ派勢力連合などとシーア派の政府軍の構図。ただ、スンニ派勢力連合も一枚岩ではなく、分裂や対立の火種あり。
・ISILはシリアにも支配地域あり。反アサド勢力と共闘関係。シリア情勢にも影響が出るとみられる。
・政府ジバリ外相とアメリカケリー国務長官と電話会談。ケリー国務長官『イラクの政治指導者が宗派・民族間の対立を超えて協力するよう』強く求める。
・アメリカはイランとの核開発協議に合わせて、イラクの事も協議予定。ただし、軍事協力はしないとの事。

3勢力の関係、揺れる中東情勢

日本でニュースが入ってきた時は、まるで「大規模侵攻が始まった」かの様相を見せた。
スンニ派の組織連合＋旧バース党党員＋アルカイダを追い出した”覚醒”運動参加者という、政府の組織に入っていない組織の連合が、政権奪取をめざして首都バグダッドへの侵攻を開始していた。
まさしく破竹の勢いで北部を制圧をして、一気にバグダッドへ雪崩れ込むのかという時に、政府軍の反撃が始まり、モスル周辺、サマワ周辺、バクバ周辺が戦闘地域となった。
ISILに占領されていたシリアとの国境検問所および北部油田の都市キルクークも、クルド人自治区の治安部隊『ペシュメルガ』によって奪還される。
ISILは、非戦闘員数百人を処刑するなどし、ピレイ国連人権高等弁務官に「戦争犯罪に当たる」と強く非難される。

このまま膠着するとイラクは、イラン・トルコ側のクルド人自治区、シリア側のISIL支配地域、そしてバグダッド以南の政府施政域と、分割されてしまうおそれがある。
シリアが世界中のイスラム過激派の集積地になっているように、ISIL支配地域もまた、イスラム過激派の集積地になり、国境を接するトルコ・イラン・シリアへの影響は計り知れない。

アメリカはイランとの核開発協議に合わせてイラクの事も協議する予定。
イランとの軍事協調はないということだが、『アメリカの若者を戦場に送らない』と方針を示しているオバマ大統領による介入は、無人機などになる可能性が高い。

なお、現在、中東情勢を睨んで、アラビア海北部に展開する米海軍の原子力空母「ジョージ・Ｈ・Ｗ・プッシュ」がペルシャ湾に派遣された。
中国の新華社ニュースによると、イランのハサン・ロウハニ大統領は「イラクが支援申し入れを行ったら、イランが支援するが、軍隊を派遣する可能性が大きくない。もし、アメリカがイラク国内のテロリスト集団に対して行動を起こすなら、検討できる」と述べた。

中東情勢もまだ荒れるのです。

記事参考

・＜イラク＞政府軍、一部拠点を奪還…過激派ＩＳＩＬ守勢に（ヤフーニュース）
・イラク情勢めぐりイランと協議も、軍事協力あり得ず＝米政府高官（ロイター）
・イラク、南部の油田・石油精製施設の警備を強化＝治安当局高官（楽天ニュース）
・イラク危機　内戦回避へ米国も行動を（MSN産経ニュース）
・イラク対応を本格検討＝米大統領（エキサイトニュース）
・イラク対応を本格検討＝米大統領（gooニュース）
・イスラム過激派は「戦争犯罪」＝非戦闘員数百人を処刑―国連弁務官（gooニュース）
・イラク、武装組織同盟に抗争の可能性 （日経新聞）
・イラク政府軍、イスラム過激派１７０人以上殺害（読売新聞）
・イラク:宗派・民族間の分断加速　国家分裂の恐れも（毎日新聞）